有事の時の防災拠点・救援本部。庁舎の耐震性を考える

 

国土交通省が発表した「住宅・建築物の耐震化の現状と課題について」によると、平成24年の時点で数々の報告書が、庁舎の耐震化の重要性について指摘されています。

庁舎が地震により被災し、災害対応に使用することが困難になる場合や、停電により災害対応に支障が生じる場合が想定されることから、庁舎の耐震化、非常用発電や非常用通信設備の整備、燃料の備蓄等の対策を計画的に進めるとともに、停電の長期化等に備えた燃料の確保策をあらか じめ検討しておく必要がある。− 地方都市等における地震防災のあり方に関する専門調査会報告(平成24年3月)

庁舎、消防署など災害時の拠点となる施設や、学校、病院、駅等多数の者が利用する施設についても、円滑な応急活動の確保や被災者の発生の 抑制を図るため、耐震診断、耐震改修を一層推進する必要がある。 − 南海トラフ巨大地震対策について(中間報告)(南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ)(平成24年7月19日)

【検討の方向性】「住宅・建築物の耐震化(非構造部材の耐震対策を含む)の推進方策」 「庁舎等の応急対策活動の中心となる施設や学校施設等 の避難所の耐震化や防災機能の強化の在り方」 − 首都直下地震対策について(中間報告) (首都直下地震対策検討ワーキンググループ)(平成24年7月19日)

参考:住宅・建築物の耐震化の現状と課題について

ところが、平成27年(2015年)の発表で、日本全国にある防災拠点の耐震化率は88.3%であることが報じられ、一方で学校の校舎や体育館が94.6%と最高値だったことで、子供たちの命を優先し庁舎の対策が遅れているという現実が指摘されました。

地震の被害で庁舎が防災拠点として機能しなくなり話題となった平成28年(2016年)の熊本地震は、まさに庁舎の建物の耐震化を急ぐべき理由を浮き彫りにするものでした。

その後、平成30年(2018年)に総務省が発表した「防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果」で「施設区分別耐震率が耐震率順にまとめられています。

これによると、

1 文教施設(校舎・体育館):98.5%(前年比+0.4%)
2 診療施設:91.6%(前年比+2.0%)
3 消防本部・消防署所:91.5%(前年比+1.1%)
4 社会福祉施設:88.0%(前年比+1.5%)
5 警察本部・警察署等:86.3%(前年比+1.4%)
6 体育館:84.0%(前年比+1.2%)
7 庁舎:83.9%(前年比+2.6%)
8 県民会館・公民館等:82.8%(前年比+2.1%)
※ その他:84.4%(前年比+3.3%)

であり、庁舎の耐震化がやはり遅れを取っていることが示されています。

市町村によっては70%を切るところもあり、特に地方で庁舎施設の耐震化の需要が高いことがわかっています。

参考:防災拠点となる公共施設等の耐震化推進状況調査結果

優先順位だけでなく、耐震診断、予算、業務の継続性など、対策には様々な要素を考慮しなければならないとはいえ、災害は「待ってはくれない」ですので、早急の対策が求められていることは明らかでしょう。

災害時に庁舎が機能しないことは、地域住民の支援と復興に向けた活動に大きな支障が出ます。当協会は、こうした事態を避けるためにも、地方自治体の耐震化の課題に向けた様々な支援を行なっています。

 

事例

【市庁舎】

全体外観 施工中の様子
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