耐震補強の種類

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耐震補強計画と耐震補強技術

耐震補強の技術や手順は、新しい耐震規定の導入や、先端材料(強化繊維ポリマー、FRP、高強度鋼材による鉄筋コンクリートなど)が開発されたことによって、過去数十年の間に格段の進歩を遂げました。耐震補強計画とは、強度アップや変形能力の向上、また変形に対する要求を減少させるなど、全体的な耐震改修のため基本的なアプローチのことを言います。それに対し、耐震補強技術とはそうした耐震補強計画を実現させるための技術的なメソッドを意味しています。

 

各種耐震手法

  • クロスブレースや他の構造壁を加えることによって建物の強度を総合的に増やす。
  • 免震システム等により地震動を減衰させる。
  • 建物の構造を部分的に強化する。既存構造各部の性能を理解し、もっとも費用対効果の高いアプローチを選択的に適用して、変形、延性、剛性を増進させることです。

 

耐震目標

地震工学に基づく知見の発展に伴い、耐震目標はいくつかのレベルに分けられ、目的に応じて適用されるようになりました。

  • 公共の安全性。居住者や通行人を巻き込む建物の崩壊がないこと、また構造が人命を守るうえで十分安全なレベルで存続すること。耐震強度が劣悪な場合には建て替えを進める場合もあります。
  • 構造体の残存。大規模な改修が必要とされるとしても建て替えまでの要求はなく、避難通路が安全に確保されること。一般的には職業・商業施設等に適用され、求められうる最低限のレベルの改修となります。
  • 構造機能の保持。構造体の主だった部分が損傷することなく、当初の使用を継続する上で衰えていない状態を維持すること。非常にレベルの高い耐震技術が必要で、石膏や漆喰などの壁面のひび・欠けなどを補修するだけよいレベルです。主に病院施設等に求められます。
  • 影響を受けない構造。歴史的建造物等の文化的意義の高い建物を守るためのレベルです。

― 耐震補強技術の主な手法 ―

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耐震補強技術

一般的な耐震補強技術は、いくつかのカテゴリーに分類されます。

  • 外部ポストテンション:新しい構造システムのための過去数十年の間に発展して来ました。未結合の高強度鋼腱ポストテンションは、PRESS(Precast Seismic Structural Systems)の下、日米の大規模な共同研究プログラムによってセルフセンタリング能力を有するモーメント抵抗系を構築するために用いられるようになりました。この耐震技術は、カルトランス研究プロジェクトによって、カリフォルニア・ブリッジや非延性鉄筋コンクリートフレームの耐震にも実験的にテストされています(1998年)。プレストレスは、柱や梁、およびジョイント部等の構造要素のキャパシティを増強します。外部プレストレスが建築物の自重や生活重量に対して構造アップグレードのために1970年代から用いられていることは特筆に値します。
  • 免震構造:建物の構造を、振動している地面から実質的に切り離すことによって保全し、耐震性を強化する免震手法です。振動をコントロールするこの地震工学技術は、新築建物と既存建物の耐震アップグレードの両方に適用することができます。通常は、建物の周囲を開削し、建物を基礎から分離します。スチールまたは鉄筋コンクリートのビームが基礎との連結部に置き換わり、分離パッドまたは基礎アイソレータがその下に設置されます。免震は建物に対して地震動の伝播を制限し、建物を基礎の上に正しい位置に保持します。建物と地面のインターフェースである入口、階段、スロープなどがそれらの構造要素の動きによって損なわれないよう細心の注意が必要となります。
  • 補足ダンパー:運動エネルギーを吸収し熱に変換し、地面に固定されている構造の共振効果を減衰させます。構造体へのエネルギー散逸能力に加え、こうした補助減衰は、構造体への変化・累加の需要を減らすことができます。被害の脅威は初期震動そのものからではなく、繰り返される地震動によって誘発される構造体の共振からくるケースもあり、実質的な意味で、補足ダンパーは自動車のサスペンション等に用いられているショック・アブソーバーと似た効果を発揮します。
  • TMD(Tuned Mass Dampers:同調質量ダンパー):TMDは「バネ」と可動式の重りを用い、風による揺れを低減させます。高い、または軽い建物等に主に採用されています。類似したデザインは、より破壊的な地震によって共振が誘発されやすい、8階から10階建ての建物の耐震性付与に用いられています。
  • 制振タンク:建物の上階に大規模な液体タンクを設置します。タンク自体の共振を妨げるパーティション(バッフル)によって、地震動の際にタンク内の液体が制御された仕方で前後に揺れ、その液体重量が建物の共振周期を変更したり抵抗したりします。運動エネルギーはバッフルによって熱に変換されて水温に吸収されますが、その温度上昇は軽微なものです。
  • 制震構造:軽量素材を使用して建築された近年の高層ビルは、特定の風の条件で(危険ではない範囲で)不快に揺れることがあります。この問題を解決するために、移動制御が可能な大重量を上層部に設置し、エアクッションや油圧フィルムなどのベアリングシステムのような制震装置の働きを持たせることができます。電動ポンプやアキュムレーターによる油圧ピストンが風の動きや自然共鳴に対抗します。設計により動力の有無とは無関係に地震における過度の振動を制御できるようなものとなり得ます。一般的に、近代の鉄骨高層ビルの共振周期は地震の初期震動周期(およそ1秒)よりも長いため、8階から10階建てのような中層ビルに比べて危険ではありません。
  • 構造補強アドホック増築:低いビルの耐震補強のもっとも一般的な形式は、既存構造物に地震力に抵抗する強度を加えることです。これは既存建物間の連結や下層階に壁や梁などの耐震補強工事をするなどに限定されます。
  • 既存建物と拡張増築物の接続:増築建造物が隣接しており、床・サイディングや屋根部が連結しているものの、既存構造に強固に接続されていないことがあります。結果として、そのような増築部は元の構造部とは異なる共振周期を持ち、互いに容易に切り離されます。これによって相対運動が起こり、二つの建物が衝突して構造に影響する深刻な損傷を引き起こすこともあります。2つのビルが構造的に適切に連結されて単一の建物のように動作する、あるいは相対運動から運動エネルギーをダンパーによって吸収するような対策が必要です。
  • 外部コンクリート柱:補強組積造で作られた歴史的な建築物は、文化的に重要な内装(壁画など)がある場合も多く、それらの妨げとならない補強法が必要です。多くの場合、外部に鉄骨鉄筋コンクリートやポストテンションコンクリートによる柱を増築します。脚部、トッププレート、屋根トラスなどとの接続には細心の注意が必要です。

 

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