日本における「耐震化」の背景を知ろう

地震大国と呼ばれるほど地震の多い日本において、耐震補強されていない多くの建物は震度6以上の地震で倒壊する可能性があると言われており、大切な生命と財産を守るための対策への認識は高まっています。

既存建築物の耐震補強の背景

necessity_pic02広い地域に甚大な被害をもたらした、平成23年の東日本大震災、平成28年の熊本地震。なおも活発化している地震活動により、政府・民間の研究結果ではごく近い将来に高い確率において首都圏における大地震発生の可能性も指摘されています。

1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で設計された建物は、現行の新耐震基準の適用を受けていないために「既存不適格」となり、2015年のさらなる法改正以後は耐震診断・結果報告が義務化されました。

<耐震診断義務化の対象>

  • 病院、店舗、旅館等の不特定多数の者が利用する建築物及び学校、老人ホーム棟の避難弱者が利用する建築物のうち大規模なもの 等
  • 地方公共団体が指定する緊急輸送道路等の避難路沿道建築物
  • 都道府県が指定する庁舎、避難所等の防災拠点施設

<耐震化の促進のための規制強化>

  • 地方公共団体の指示に従わない特定建築物を公表(法改正)
  • 倒壊の危険性の高い特定建築物については建築基準法により改修を命令(建築基準法)

耐震診断とは、1981年(昭和56年)以前の旧耐震設計法の基準で建てられた建物に対して、現行の耐震基準によりその耐震性を再評価するものです。

新たな基準に基づく診断により十分な耐震性能を保有していないと評価された建物は、既存不適格建築物とされ、適切な耐震補強を行うことが求められています。


既存建築物には様々な形状のものがあり、また利用目的も多岐に亘るため、専門的な調査による耐震診断が必要とされます。

1階の壁が少なく上階では壁が多い建物、壁が遍在する建物など、構造上のバランスが悪い建物は既存不適格建築物になる場合がありますが、特に1階部分に駐車場やピロティなどがある場合など、建物の利用や景観への配慮も必要となります。

マンションなどの共同住宅を除く建物で3階建て以上、床面積1000㎡以上の特定建築物(学校・病院・劇場・百貨店・事務所・老人ホーム・商業ビル)などは、耐震補強の需要がある建物に該当するケースが少なくありません。こうした施設に耐震補強を実施するには、後の収益事業にとってプラスとなるための綿密な計画、また、現利用者との交渉などが必要となります。


診断によって補強の必要性が明らかになったとしても、補強法が建物利用の便宜性と対立する場合にはその後の収益事業にも大きく影響することもあり、問題は複雑化し、「コストが掛かる」「現行の建物利用者に迷惑が掛かる」「何から取り組めばよいかわからない」などの現実的な理由から、耐震診断・補強が進まないというケースも少なくありません。

 

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