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入院患者がいるのに耐震工事のために閉鎖はできない……?
現在、全国に存在している病院への入院患者数(2016年現在)は130万人を超え、通院患者数は720万人を超えています(厚生労働省発表)。
これだけの入院・通院患者が存在する中で、現在、病院はとある問題に直面しています。
「耐震改修促進法の改正」によって病院のような多くの人が集まる施設で耐震診断が義務化され、病棟の耐震補強工事を考えなければならない病院や診療所が増えたのです。
この耐震補強工事に関しては現時点で義務化まではされておらず、「努力義務」とされています。
耐震化を望む病院関係者の本音
不特定多数の人が集まり、現在進行形で多くの人が入院している施設である事を踏まえると、いつ起きるかわからない大きな地震に備えて耐震補強工事をできるだけ早々に行いたいと、病院としては考えるものです。
しかし、病院や診療所の場合、耐震診断の結果を受けて補強の必要が明確になり、耐震補強工事を実施したいと強く思ったとしても、どうしても二の足を踏んでしまう理由があります。
例えば……
- 大きな病院施設ほど耐震補強工事の規模が大きくなる為、騒音や景観を損なうなどの物理的弊害が生じる。
- 補強によって棟内のスペースを自由に使えなくなってしまい、医療機器や設備などの変更や移動を余儀なくされる。
- 小さな施設の耐震工事の場合、施設全体に工事が及ぶ可能性もあり、運営を停止せざるをえない場合がある。
といった、現実的な問題に直面するわけです。
耐震化を望んでいたとしても、棟内・院内に患者がいると補強工事が実施が難しくなります。そのため、入院患者の受け入れ先の病院を見つけなければなりません。
また、工事中には診察・治療を含めた医療行為を行うスペースを確保できなかったり、工事後もブレースや壁が作られてスペースが使えなくなったりと、患者のことや病院の経営のことを考えるとどうしても耐震補強工事に踏み切れないということに……。
小さな病院やクリニックの場合は、耐震補強工事中に営業を停止しなければならないことが単に経営的な問題だけではなく、特に田舎で運営している場合などは他に病院がないという事情もあることから、切羽詰まった状況ではないという理由で工事を計画することすらが難しいのです。
病院内に「居ながら」耐震改修工事ができる?
だからこそ、入院患者や来院者が建物を利用しながら施工できる「居ながら施工」という耐震補強工事の需要が高いのです。
もちろん、工事を行なうのだから安全確保のための対策、騒音対策や景観に与える影響などを考える必要があります。しかしながらこの施工方法は一般的に見られる工事のような大規模さはなく、工事に使うスペースを最小限にとどめ、工事を行う際の騒音や臭気、埃なども最低限に留めるように細心の注意を払って行われます。
工事に際しては、「患者に対するケアはどのように行えばいいのか?」「どのような対応の形を取れば、病院・患者双方の関係を崩さず、信用を失わずに施工できるのだろうか?」という問題もクリアしなければなりません。
とはいえ、耐震補強工事は入院中の患者にとって「もしも大きな地震が生じたら」という観点からとても重要なものであり、「この病棟は大丈夫だろうか」という不安からの解消、安心感を生み出します。
説明と理解。地震被害に関する報道が病院の耐震補強工事を後押し
患者一人一人に向き合い、耐震補強工事の重要性を説明し、工事中であっても病院の移動や医療行為の中断がないということを知らせることができるのは、「居ながら」耐震改修が行えることのアドバンテージです。
大きな病院、小さな病院とそれぞれ規模は違うものの、患者に出来る心遣いなどに差はありません。しかし、医療行為によって患者を救うこの場所が、災害時に避難場所や治療場所として用いることができないとすれば、本末転倒な話に…。
昨今生じている大きな地震による被害と病院のような公共施設の耐震性。多くの方が対策の重要性を認識するようになり、告知方法を確立し工事中に起こるさまざまな弊害に対するケアを徹底することで、利用者の理解を得やすくなっているということも見受けられるようになりました。
耐震補強工事に二の足を踏んでいる病院施設も、前向きに踏み出す時代になりました。居ながら施工がそれを可能にしてくれるからです。